このページの本文へ移動
色合い 標準 青 黄 黒
文字サイズ 標準 拡大 縮小
RSS
文字サイズ
色合い

本日 5月1日(木)の開館状況

クリックすると、各館の案内がご覧いただけます。

トップ岡倉天心記念室テーマ展令和3年度(2021年4月~2022年3月)> 震災復興特別展示「平潟港と八大龍王画」

震災復興特別展示「平潟港と八大龍王画」

岡倉天心記念室の写真

震災復興特別展示「平潟港と八大龍王画」

人々は古来より、祈りの気持ちを様々な造形に託してきました。例えば本展で紹介する「八大龍王画」からも、人々が日々の営みの平穏を願う思いを読み取ることができます。


静かな海を走る一艘の船。描いたのは日本美術院で活躍した画家の橋本永邦(1886‒1944)です。画面中央やや上部、横2列に配列された円の中に描かれるのは、古くから海上の守護神として信仰された八大龍王です。岡倉天心が賛(絵に寄せられた文章)を寄せており、「玄天風静  慈海波寧  布帆無恙  永仰威霊」と、まさしく海の安寧を願うような内容となっています。


本図の制作経緯は、この掛軸を納める桐箱が証言してくれます。箱の表面には「八大龍王画  橋本永邦筆  平潟町小舩組合一同」、裏面には「大正元年十月  鈴木庄兵衛願」と天心の直筆で書かれ、鈴木が属した平潟町小舩組合のために制作されたことが分かります。平潟は、美術館北側の沿岸に位置する県最北端の漁港です。鈴木は天心に釣りを教えた人物ですから、本図は天心と平潟の人々の交流から生まれた作品ということになります。漁師とその家族にとって、海は生活の糧であると同時に、時に猛威をふるう存在です。海の安寧を祈る気持ちから平潟ではこうした絵が求められ、天心がその思いを汲んだと言えるでしょう。


この作品は天心没後も大切に保管され、現在もなお、組合が年に一度開催する八大龍王祭で会場に掛けられます。龍王たちは100年前と変わらず平潟の海を見守っているのかもしれません。

 

平潟の八大龍王碑 寄付者

平潟の八大龍王碑。発起人は鈴木庄兵衛。岡倉覚三(天心)が寄付者となっている。

展示資料

橋本永邦画・岡倉天心賛「八大龍王画」
大正元年(1912)、平潟小型船組合蔵

橋本永邦画・岡倉天心賛「八大龍王画」

岡倉由三郎「覚(八大龍王画の由来書)」
昭和4年(1929)12月17日、当館蔵

岡倉由三郎は天心の弟にあたる英語学者で、岡倉家の中で天心が最も信頼を寄せていた人物と言われている。この由来書は平潟の漁師らの依頼で、由三郎が改めて「八大龍王画」の伝来を書き付けたものである。朱印が押されているものの、ところどころ加筆がなされており、草稿段階のものか、控えと思われる。


掲載日 令和6年11月6日