館長あいさつ
およそ120年前、岡倉天心と4人の画家たち(横山大観、菱田春草、下村観山、木村武山)はこの地に移り住み、近代日本画の確立をめざして研鑽を重ねました。彼らは、太平洋に面した崖の上に五浦日本美術院研究所を建て、制作に励みました。
1997年、その研究所跡地の背後の丘の上に、茨城県天心記念五浦美術館が開館しました。美術館の展望台からは、彼らが目にした景観を眺めることができます。「五浦」は太平洋に突き出した地形で、まるで海の中に浮かんでいるような、解放された気持ちになり、天心はなぜここを選んだのか、分かる気がします。
芸術は、自然と深く結びつくことで、人間のこころを解放してくれるものです。近代という時代の波に翻弄された彼らの芸術運動は、この場所の力を得て発展することができたのです。
自然の力と同じように、芸術の力も時代を超えて私たちのこころに響いてきます。茨城県天心記念五浦美術館では、芸術作品と自然が出会う、岡倉天心の遺産ともいうべき場の力を十分に感じていただけるよう、運営に努めていきたいと考えています。
まずは、この風景を体験していただくだけでも足を運ぶ価値があると思います。皆さんのご来館をお待ちしています。
掲載日 令和6年12月18日