岡倉天心記念室テーマ展示

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天心の弟岡倉由三郎Ⅰ 英語学者としての活動

天心の弟岡倉由三郎Ⅰ 英語学者としての活動

 岡倉由三郎は天心の実弟であり、最も信頼できる身内の一人として公私にわたって兄を支え続けました。一方で、由三郎は明治末期から昭和戦前期にかけて日本における英語教育の第一人者として活躍し、さらには国際人天心の活動を受け継ぎ、海外での講演活動や英文著書の発行を通して日本文化を欧米に紹介するなど、多彩な業績を残しています。今回は天心の弟岡倉由三郎を紹介する2回にわたる展示の第1回目として、由三郎が関わった英語関連の諸資料を展示し、英語学者としての由三郎の業績の一端を紹介します。
 明治後半、ヨーロッパ留学を果たした由三郎は、日本人が英語を習得し国際性を身につけることが、日本の将来につながると確信するようになり、帰国後、東京高等師範学校、立教大学で教鞭をとるなど英語教育に専念し、多くの優れた後進を育てています。また『研究社英文学叢書』(大正10年~昭和7年)や『研究社新英和大辞典』(昭和2年)を刊行するなど英文学や英語学の分野にも大きな業績を残しています。さらに、東京中央放送局(JOAK)で大正14年から一般向けの初等英語や英文学に関するラジオ英語講座を日本で初めて担当したのも由三郎でした。このように、由三郎は近代日本において英語教育と英語の普及に尽くした功績者といえます。

岡倉由三郎(1868-1936)
略歴

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岡倉由三郎

ロンドン大学で講演を行った際の岡倉由三郎
(明治38年撮影)

展示資料
『夏季英語講座資料』昭和2年 日本放送協会関東支部
『夏季英語講座資料』昭和2年 日本放送協会関東支部

表紙

『夏季英語講座資料』中身

中身

大正14年に開局した東京中央放送局(JOAK)はラジオ番組を編成するにあたり、夏期休暇中の学生を対象にした由三郎による語学番組「英語講座」の放送を始めた。昭和2年の内容は、由三郎を含む6人の講師が一週間ずつ交代で英文学を紹介する各回35分の番組であり、由三郎が担当したのはイギリスの民話『Jack the Giant-Killer(巨人退治のジャック)』だった。

 

岡倉由三郎「英語講座用メモ [Jack the Giant-Killer]」昭和2年

この直筆のメモからは「巨人退治のジャック」を日本のお伽話「桃太郎鬼ヶ島征伐」になぞらえて、「鬼退治のJack」と訳すなど、英文学を日本人にもわかりやすく紹介しようとする由三郎の姿勢が読み取れる。

 

『英語講座読本(初等科)第二』大正15年 日本放送協会関東支部
『英語講座読本(初等科)第二』大正15年 日本放送協会関東支部

由三郎は大正14年に開始されたラジオ放送「英語講座」に続き、大正15年から「英語講座(初等科)」を担当するが、本資料は同講座の第二回目のテキストである。内容は4本の比較的簡単な短編英文物語を読解していくものであった。

 

『ラヂオ・テキスト 基礎英語(春期)』昭和10年 日本放送出版協会
『ラヂオ・テキスト 基礎英語(春期)』昭和10年 日本放送出版協会

由三郎は昭和11年2月に病で倒れるまで、ラジオ英語講座を担当し続けた。「英語講座(初等科)」は昭和8年より番組の名称を「基礎英語」に変更し、内容も発音やアルファベットの基礎を教えるなど、英語の入門編としての特色を備えるようになる。今日も同名のNHKラジオ英語講座は継続され、多くの人から親しまれている。なお、放送講座用の印刷物がテキストと呼ばれるようになったのは、由三郎が用いた番組テキストに由来するという。

 

岡倉由三郎「研究社新英和大辞典構想メモ」
岡倉由三郎「研究社新英和大辞典構想メモ」

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由三郎は研究社による英和大辞典を編纂し、昭和2年に初版を刊行している。この構想メモに「今日の程度で新陳代謝を実行する」や「形は使用者の便をむねとする」などとあるように、新しい語彙を取り入れつつも使用者にとって使いやすい編纂が心がけられた。

 

岡倉由三郎編『新英和大辞典(改訂増補第7版)』昭和27年 研究社
岡倉由三郎編『新英和大辞典(改訂増補第7版)』昭和27年 研究社

昭和2年に刊行された『研究社新英和大辞典』は由三郎の監修のもと昭和8年に改訂増補版が、昭和11年に新版が出版されるなど、生前二度改訂が行われた。その後今日まで改訂が続けられ、優れた英和大辞典として人々に広く愛されている。
※[初版は昭和11年]

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