>
QRコード携帯電話でも当館の情報をご覧になれます。
左のQRコードを携帯電話で読み込んでアクセスして下さい。

アドビリーダー
*PDFファイルをご覧になるには、アドビリーダーが必要です。お持ちでない場合は、上のバナーのリンク先からダウンロードして下さい。

岡倉天心記念室テーマ展示

ホーム > 展覧会> 岡倉天心記念室 >テーマ展示

岡倉天心邸書斎欄間絵(らんまえ)

趣旨
岡倉天心邸は、現在、茨城大学五浦美術文化研究所内に残されていますが、その遺構は天心が晩年の五浦で過ごした明治末から大正初めの頃に比べると、その後の改築や部分的な取り壊しによって小規模となっております。
当記念室に復元されている天心の書斎と基子夫人の居室には、当時、それぞれ、横山大観と菱田春草の筆による襖(ふすま)絵や袋(ふくろ)戸(ど)絵などがはめられていたといわれています。しかし、現在ではその大半が失われてしまい、わずかに茨城大学に天心の書斎の付け書院のものと思われる欄間絵が残されています。
天心生誕150年、没後100年を迎えるにあたり、往時を偲(しの)ばせるこの貴重な遺品を紹介いたします。
天心邸欄間絵
天心邸の障壁画に関する明確な記録はないが、美術商で、天心邸に出入りしたことのある中川九郎は、「氏の居間は襖、袋戸など大観が描いて居る。夫人の居間に襖は春草が描いて居る。大観の襖には杉の図が描かれてある」と回想している。また、天心は庭に生えていた1本の杉の木を気に入り、対岸の松山を背景に、窓から望むこの杉の木がモチーフの一部となるような襖絵を大観に描かせたという。これら中川の回想から、この欄間絵が大観が杉木立を描いたという襖絵と共に天心の書斎を飾っていた可能性は十分に考えられる。
作品は現在、木立の描写や格子状の余白など全体的に鈍い黒色に覆(おお)われており、銀箔を貼った上に銀泥で木立を描いたものが、酸化により黒変したものと考えられる。また、杉の葉の部分には金が施されていることから、描かれた当初は金銀を多用した華やかな作品であったことがうかがい知れる。
天心邸欄間絵
天心邸欄間絵 明治38~41年頃(c.1905~08) 板(杉)・彩色 国立大学法人茨城大学蔵
作品の周辺
朦朧(もうろう)体を生かした微妙な色の変化によって、朝夕の刻々と変わる空の表情を情緒豊かに表現したり、絵の具のぼかしと濃淡による木立の描写が、木々の重なりと遠近感を巧に表すなど、この欄間絵は、明治38年から41年にかけて大観と春草が手がけた作品と表現の近い作品が何点か存在している。
しかし、この時期の大観と春草の作風は非常に近く、落款(らっかん)のない作品をどちらの画家が描いたものか断定することは難しい。したがって、中川の回想から大観筆と考えられるこの欄間絵は、作者を特定するまでには至っていない。
横山大観「月の出」明治38年(1905)
横山大観「月の出」明治38年(1905)
菱田春草「夕の森」明治41年(1908)
菱田春草「夕の森」明治41年(1908)

このページの先頭へ